細胞内を見るには顕微鏡が不可欠です。21世紀はライブイメージングの時代とも言われ、生きたままの細胞内を「見る」方法論は現在劇的な進歩を遂げつつあります。
光学顕微鏡観察で重要な要素に分解能があります。顕微鏡の空間分解能は観察する光の波長に制限され、古典的な光学理論では、光の回折限界(現行の光学顕微鏡では200 nm程度)を超えることはできないとされていました。近年になって、それを超える「超解像」の方法論が次々に考案され、ノーベル化学賞の対象にもなりました。しかし、ここでもう1つきわめて重要な要素に時間分解能があります。空間でどんなに高い分解能を達成しても、その計測に長い時間を要していては、細胞内の速い動きを追いかけることができません。生細胞イメージングには、空間分解能と時間分解能が同時に高いことが必須です。
私たちは、生細胞イメージングにおいて高い時空間分解能が不可欠であることを早くから認識し、スピニングディスク共焦点法と超高感度高速検出系を組み合わせ、数学的処理によって超解像ライブイメージングを可能にする方法論を開発して、SCLIM(Super-resolution Confocal Live Imaging Microscopy)と名付けました。これまでにさまざまな成果を挙げてきましたが、この度、さらにその性能を桁違いに進化させた顕微鏡システムSCLIM2の完成に至りました。たとえばSCLIM2Mモデルは、高速共焦点スキャナ(2000 frames/sec)、高速Z軸駆動装置(インターバルなし)、3色同時分光装置(緑、赤、赤外)、冷却型高S/Nイメージインテンシファイア(増倍率106)、高速高精細CMOSカメラ(400万ピクセル、1000 frames/sec)を備えます。撮像するフレーム毎に光子数解析とガウシアン近似を行って、時空間4Dスペース上の全ての単一光子の位置を精密に決定すると共に、ノイズをほぼ完全に除去することができます。この位置情報に対し、自ら開発した「誤差評価に基づく帯域外外挿デコンボリューションアルゴリズム」を適用した精密計算を行い、20 立体/secの高速かつ80 nm以下の空間分解能で多色動画撮影および分子数計測が可能になりました。
さらに、より高い時空間分解能への挑戦、二光子励起による深部観察、新規プローブによる相互作用や活性の可視化など、貪欲に新しい開発を進めていきます。